たくさんのお母さんたちとの出会い

2005年、日本帰国後しばらくの間は、出産現場で働く助産婦さん方に頭蓋仙骨療法を教えたり、産科医院や助産院で妊産婦さんや赤ちゃんの治療活動を行うことが多かったのですが、ここ数年、障がいを持ったお子さんをみることが急に増えてきました。

そしてお母さん方からお話しを聞くことにより、日本のお母さん方が抱える現状が見えてきました。

発達障がいはよくなるの?

アメリカでは、TEACCHプログラム(米ノースカロライナ州で実施されている、自閉症等コミュニケーションに障がいのある子ども達やその家族への包括的対策プログラム)のように、本人・家族・学校・医療がそれぞれの立場・意見を尊重し、情報を共有し、連携して取り組んでいる地域がありますが(もちろん、州ごとに違いはあります)、日本では関係機関同士の実質的な連携もなく、包括的な対策が大変立ち遅れていて、お母さんたちがすべてを背負い、個人的にあちらこちら奔走しているということがわかってきました。

私共が出会った方の中で、三人のお子さんを持つお母さんがいました。上の二人の子育ての経験から末っ子の発育・発達が明らかに遅れているということが早い時期からわかっていたといいます。

いろんな機関に出向いて相談に行っても「ちょっとゆっくりさんなだけですよ。様子をみましょう」という返事しかなく、幼稚園でも「マイペースなだけ」「お母さんのその過剰な心配の方が問題」ということでその方の表現をお借りすると「放置」=経過観察? されていたようです。

notebook-933362_1920しかし小学校にあがってWISC-Ⅲテストを受けると数値が相当低いことがわかり、担任の先生も自分では対処できないということで支援学級を勧められ、突然「障がい児」扱いされたと心を痛めておられました。

人のいうことを信用し過ぎたばっかりに手遅れにさせてしまったとご自身をとても責めていらっしゃる姿はとても痛々しいものでした。

その時々に対応に当たられた方々もご自身の職務の範囲で誠実に対応されたのであろうと思いますが、やはりここでも実質的にもっと高度な専門性を持った専門家たちが連携してそのお子さんをチームとして見ていくという行政の仕組みが無かったことが、かけがえのない大事なお子さんの時間を無駄にしてしまった一例といえるでしょう。

また別のケースでは、少し多動傾向のあるお子さんをお持ちのお母さんが支援センターから紹介してもらったドクターを受診したら、たった2回目の診察で薬を処方されたと大変憤っておられました。

1回の診察時間も5~10分ほどで短く、もっとじっくり子どもを診ていろいろ話を聞いてもらって信頼関係を築いた上での処方でないと納得できないともっともなことをおっしゃっていました。

これも誤解の無いようにしておきたいのですが、全てのドクターがこの様であるとは申し上げていません。親身になって相談に応じてくれる優秀なドクターもいることと思います。

しかしながら、残念なことに最近では処方された薬をのませるべきかどうか真剣に悩んでいるお母さん方が大変増えているというのも事実です。

また公共の療育センターや小学校等の方針・取り組み方も実に様々で、市町村が違うだけで内容にびっくりするほどの違いがあることもわかってきました。

あるお母さんはお子さんに対して個別の働きかけを希望されているのですが、「自由に遊ばせる」というセンターの方針があり、家庭での取り組みもセンターには内緒でしているという方もいらっしゃいました。

また保健所や療育センターから紹介される作業療法・理学療法・言語療法なども予約がいっぱいで受診までに半年待ち、そして療法に通うことになっても2週間~1か月に一度の頻度でしか行くことが出来ず、しかも家庭でもできる事を聞いても具体的な指導もされないのが現状です。

お母さん方からお話しを聞けば聞くほど、行政の取組み・現場の対応が十分とは言えない状態で、将来への不安を抱えながら孤軍奮闘されているお母さん方の姿が浮き彫りにされてきます。

そして、ほとんどのお母さんが今より更に良い方法はないだろうかといろいろ情報を集め奔走されています。

また、自分のやり方が悪かったから、自分がいたらなかったから‥とご自身を責めていらっしゃるお母さん方のなんと多いことでしょう。十分すぎるほど頑張っているのに更にご自身を責めている姿を見ると心が痛みます。

世界で一番お子さんのことを知っているのはお母さんです。

世界で一番お子さんの可能性を信じているのもお母さんです。

そんなお母さん方に、私共の経験を分かち合い、ご家庭でお母さん自身で出来ることもお伝えしたいと思っています。

先の見えない迷路をどの方向に進めばいいのかわからないまま悩んでいるお母さん方の力になれたらと思っております。

お母さんは自分のお子さんにとっての『ドクター・カウンセラー』になることだってできるんです。

どうぞひとりで悩まずに、お気軽にお問い合わせください。

藤牧経乘