小さな男の子との出会い

35年以上の長きにわたり、障がい児(者)の治療・療育の仕事に携わることになったきっかけがあります。それは、大学時代心身障害児福祉を専攻していた時に出会った、当時2歳の重度脳性まひの男の子の経過の様子です。

その男の子の家族は、ある脳障害機能改善のホームプログラムを実践していて、私は学生ボランティアとして2年間そのお手伝いをしました。

初めは寝たきりで、医者から一生自分の足で立つことは出来ないと宣告されていたその男の子がなんと2年後には外で元気に走り回れるようになったのです。

動けないからといって何もしないでそのままベッドに寝かせていたらその男の子はどうなっていたでしょう。 彼は驚異的な回復を見せてくれました。

医者から言わせると「奇跡」に近いことが起こったのです。

ご両親をはじめ彼の周りにいる全ての人が、彼の中に潜む人間として前に向かって生きていこうとする生命力の存在を信じて疑わず、毎日彼に対する働きかけを地道に続けたことがこういった素晴らしい結果を生み出したのです。

彼が一歩一歩着実に自分の歩みを進めていく姿を目の当たりにし、私の魂は深く揺さぶられ、涙が出るほど心の底から感動しました。

たとえ今は身体が動かなくても 人間の身体の中は生きる力で溢れている!人間として成長していく力は全ての人が持っている!それを引き出すための手助けがしたい!

大学卒業と同時に、この熱い想いだけを胸に私は脳機能改善の更なる研究の為に片道切符でアメリカへ飛び出していきました。この若き日に抱いた熱い想いが私の原点であり、現在も私をずっと支え続けてくれています。